塩ぶりとは
塩ぶりとは、ブリの鰓と内臓を取り出し、約2日間塩漬けにした後、4~5日間乾燥させたものである。冷蔵技術が未発達であった時代の保存のための加工品であったが、現在ではブリの旨味を引き出した嗜好性を重視した製品である。岐阜県飛騨地方などでは「正月の縁起物」として重宝されている。
(本文末のコラム「塩ぶりの歴史と文化」もご参照ください。)
主な生産地
富山県、岐阜県
生産の動向・消費の動向
ブリは、富山県沿岸では主に11~1月に定置網漁によって漁獲される。近年(2014~2023年)の富山県におけるブリの漁獲量は104~363トンの範囲にあり、平均約218トンである(図1)。これらを原料とする塩ぶりの生産量は年間10トン程度であると推定される。近年、大型(製品重量7kg以上)の塩ぶりよりも、小型(製品重量3~5kg程度)の塩ぶりの消費が増加している。
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原料選択のポイント
4kg以上の製品は主に富山県産が使用されるが、漁獲量が少ない場合は石川県産、新潟県産等の他県産も使用される。また、3~4kgの製品は愛媛県産等の養殖魚も使用される。
加工技術
鮮度の良い原料魚を用いて冬場の気温が低い時期に乾燥することで、脂質の酸化を抑制するとともに、旨味成分であるイノシン酸の分解を抑制する。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 富山県産の他に石川県産、新潟県産の天然魚を使用する。最近は品質が安定している愛媛県産等の養殖魚も使用されている。
- 原料洗浄 鰓、内臓を除去し、よく洗浄する。
- 成形 塩が浸透しやすくするため、魚体の腹腔内に切れ目を入れる。(目玉の裏側に切れ目を入れる。次に、背骨の両側に腹から1/3ほど切れ目を入れる。)
- 塩漬け 振り塩漬けの場合は原料魚と同量の食塩で内部および外側によくすり込む(写真1~4)。さらに、同量の食塩を振りかけ、2日ほど漬け込む。
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立塩漬けの場合は20%以上の塩水に24時間漬け込む。最近は、減塩志向であり、使用する塩は減少 しており、製品の塩分も低くなっている。
- 洗浄 表面の塩を落とした後、真水で洗浄する。
- 乾燥 腹側を割り箸で広げ、尾部を縄で縛り吊るす(写真5)。天日の場合(10℃以下)、4~5日間乾燥する。機械乾燥の場合、18~19℃で20時間乾燥する。
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- 製品 塩漬け2日間、天日乾燥2~3合、歩留まりは約65~70%である。
加工に用いる機器
天日乾燥が主流であり、この場合、機械は用いない。機械乾燥の場合には冷風乾燥機を用いる。
製品の形態
従来は、セミドレス(エラと内臓を除去したもの)であったが、近年は、切り身とする場合がほとんどである(写真6)。
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包装および保管方法
ビニール袋に入れた後、化粧箱に入れて包装する(写真7)。近年は、切り身とした後、真空包装する場合が多い。従来は、塩分が高く常温保存であったが、近年は減塩志向で塩分が低いため、冷蔵または冷凍保存が主流となっている。
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調理方法および食べ方
ゆでたり、焼いたり、雑煮に入れたりする他、照り焼き、粕汁等にして食べる。忘れられないほど美味といわれる。
同類製品例
ブリを薄くスライスしてから乾燥、燻煙した燻製が商品化されている。
コラム
「塩ぶりの歴史と文化」
富山湾で獲れるブリは古来より「越中ブリ」と呼ばれ、全国でも名をなし、今でも「氷見ブリ」は最高級ブリの代名詞である。近世(慶長年間1596年)に入り、氷見では、定置網漁業が開発され、大量水揚げが可能となったことから、庶民にまで行き渡るようになったと思われる。加賀藩は水揚げされた魚に課税していたが、特にブリに対しては厳しいものであった。富山県内から金沢に魚を輸送する場合、当時の物資輸送法では魚の品質が落ちる地域もあった。金沢に近い氷見・新湊地方のブリは新鮮なうちに金沢へ輸送できたが、金沢まで遠い魚津や能登の奥部(珠洲・鳳至))のブリは鮮度が保てず、藩の流通システムから外された。このことから、これらの地方では、獲れたブリを塩ブリに加工して飛騨高山に運んだ。高山ではこれらを「越中ブリ」と呼び、ブリ市が開かれた。ここから更に信州へと運ばれ「飛騨ブリ」と名が変わった。
近年の大量、高速輸送システムと鮮度保持技術の発達により、ブリは生鮮品として全国各地に送られ、刺身や焼き魚として賞味されるようになり、この塩ブリは今では生産量はごくわずかであるが、江戸時代から続く伝統食品として受け継がれている。
富山県射水郡下村の加茂神社には平安時代から伝わる全国でも珍しい「ブリ分け」神事が今でも残っている。この神事は元旦の朝、本殿で供え物の10キロを超す塩ブリ5尾が並べられ、祝詞が始まると、紋付き袴姿の読み上げ役が右手で頭、左手で尾を持ち、1尾ずつ持ち上げながら、3集落の名を読み上げる。この後、祝い年と厄年を迎えた氏子から奉納された酒や山海の幸を宮司が神前で読み上げ披露する。この神事が終わると、氏子の数だけ切り身にされ、配分される。氏子はこの切り身を家族全員で焼いて食べ、1年間の無病息災を祈る。
富山県においては、ブリは古くから県民にとって馴染みの深い魚の一つであり、ホタルイカ、シロエビとともに1996年10月に「富山県のさかな」に選定されている。
(富山県農林水産総合技術センター食品研究所 原田 恭行)
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