鮎一夜干しとは
アユの干物(開き)である。アユが夏場から秋口にかけて漁獲されるため、強い日差しによる身や脂質の品質劣化を避け、夜間に製造した方が味や香りの良い製品になることが名称の由来と思われる。現在では、状態の良い原料魚を冷凍保存し、夏季以外にも製造する業者もある。
(なお、アユを捕獲するヤナ漁の詳細については、本文末尾のコラムに記載してありますので、ご参照下さい)
主な生産地
岐阜県、徳島県、高知県、山口県、大分県、熊本県、宮崎県 など
生産・消費の動向
全国の生産量は不明であるが、頭や骨ごと食べられる手軽さと、低塩分嗜好に対応した製品の製造により、近年は増加傾向にある。鮎の甘露煮や昆布巻きを製造する業者を中心に製造されており、2025年現在、岐阜市に5万尾程度を生産する業者が3社ほどある。
原料選択のポイント
体重で約60g、全長15~16cmのアユが最適とされ、これ以上大型になると骨やヒレが硬くなるため適さない。天然アユは製品にしても特有の香りが強いとされ、原料として好まれる。
使用する副原料
塩水の調整に基本的には粗塩(天日粉砕塩)が用いられる。また、各メーカーによって独自の調味料(酒、みりん、昆布だしなど)が用いられる。
加工技術
開き干し製品の製法と同様、立て塩漬け(塩水漬け)により塩を浸透させ、乾燥することで旨味成分を濃縮させている。アユの香りは、キュウリアルコール等の揮発性成分であり、それらの芳香を損ねないためにも、強い日差しを避け、過度に乾燥させないことが重要である。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 10月上旬にヤナ場(写真1)で漁獲された天然の「落ちアユ」(写真2)を用いた製造例を記す。郡上鮎の地域ブランドで知られる長良川上流域には観光ヤナ(コラム参照)が点在しており、夏の間、縄張りを作っていたアユが秋口になると渕に集まり、産卵のために群れを成して降下する現象がみられる。10月下旬になると多い日で3万尾の落ち鮎が漁獲され、谷水を引き入れたプールに2~7日間ほど活かし、砂を吐かせる。その後、水氷に投入して致死させ、サイズと雌雄を選別する(写真3)。70g以下の中小サイズ(写真4)が一夜干しなどの加工原料として利用される。
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- 下処理 洗浄・背開きにして、鰓を取り除き、内臓を取り分ける。魚体の色や香りを損ねないために鱗は取らない。取り分けた内臓は「うるか」に加工される。
- 塩漬け 料理酒を少々加えた2.5~4%の塩水に30分~2時間漬け込む「立て塩法」を行う(写真5)。特に水氷で締めた直後の魚は死後硬直により筋肉が引き締まり、塩が入りにくいため、高めの塩分で漬け込み時間を長くする。また、メーカーによっては昆布出汁を用いた塩水が使用される。
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- 干し 夏季の強い日差しに当てると過度に乾燥し、身も白濁するため、基本的には夜間に干す。冷凍した原料を解凍して夏季以外に製造する場合、天日に半日ほど曝し、表面が乾く程度に干す。この際、皮に干し網の網目を付けないため、皮面を先に干す。
- 包装 ポリ袋に脱気包装する。
- 出荷 賞味期限は冷凍で30日程度とされている。
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加工に用いる機器
冷凍設備(原料魚及び製品の保管)
品質管理のポイント
原料魚のサイズは統一されているが、冷凍原料を解凍したものと、生鮮魚を水氷で締めた死後硬直中のものでは塩の入り方が異なるため、後者では浸漬液の塩分を高めにし、浸漬時間を長くするなど工夫が必要である。
製品の形態
1~4尾を真空包装し、冷凍したものが流通・販売されている。また、土産物店等では、加熱殺菌された製品も販売されている。
包装および保管方法
ポリ袋に真空包装され、冷凍保管される。また真空包装後に加熱殺菌し、常温流通が可能な製品もある。
調理方法および食べ方
火であぶって酒の肴としたり、細く切ってお茶漬けに添えたりして食べる。物や煮物ともよく合う。
コラム
「鮎のヤナ漁」
ヤナ漁とは、急流の瀬に堤を設け、川の流れを集めて竹簀を張る仕掛けで、川を下るアユを獲る伝統的漁法の一つである。その漁期は河川によって規則があり、長良川は8~10月の間と定められている。そのため、毎年漁期が終わると、作ったヤナ場は撤去し、元の川の流れに戻して冬を越し、翌年7月中旬からの漁に向けて再び製作工事が行われる。その維持に労力や経費がかさむためヤナ漁は減少傾向にあり、現在では希少な漁法といわれている。
(岐阜県食品科学研究所:加島 隆洋)
