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乾製品総論

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乾製品総論

はじめに

 水産乾製品は、魚介類を乾燥することにより、貯蔵性を付与した加工品の総称である。
 乾燥は、湿度の低い空気や天日にさらすことで容易に行えることから、魚介類の貯蔵法として最も古くから用いられてきた加工技術の1つである。
 乾製品は、加工方法よって素干品、塩干品、煮干品、節類、くん製、凍干品に分けられ、さらに多種の魚介類を原料とするため種類が豊富で、生産量も多いことから水産加工品において重要な地位を占めている。なお、本書では節類と燻製は独立させてまとめた。
 魚介類は、地域や季節によって漁獲されるものが異なるため、各地に特徴ある乾製品が製造されてきた。近年は、冷凍および流通手段の発達により、魚介類は地域を越えて移動し、海外からの輸入も容易になったことから、いくつかの乾製品は、漁獲の影響を受けず、年間を通して安定した生産が行われるようになった。しかし、全国で類似した原料を使用して乾製品を製造するため、一部の製品では地域の特徴が失われつつある。
 冷凍技術の発達は、乾製品の製造および貯蔵方法にも影響を及ぽし、貯蔵を低温に依存し、嗜好性の向上を目的として乾燥したものの生産量が増加している。また、室温貯蔵が可能な上干の素干品、塩干品、煮干品などにおいても、脂質酸化および変色などの品質低下の防止を目的として、冷凍貯蔵されるものも増加している。

 魚肉成分は、乾燥および貯蔵中に変化しやすいが、消費者からは風味、栄養、外観などに優れた高品質な乾製品の供給が望まれている。
 在来の乾製品においても、品質向上を目的として、新たな乾燥器や包装機が導入されるなど、製造方法は変化しつつあるが、生産量は減少傾向にある。生産量の維持、増大には、個々の製品の特長を保ちつつ、さらに品質向上を図ることが重要である。

原理

 魚介類は、水分が多いため室温では比較的短期間のうちに腐敗する。乾燥により水を除去することで、微生物の繁殖および酵素活性を抑制し、貯蔵性を高めたのが乾製品である。乾製品の製造に多く用いられている乾燥法は、天日乾燥法、熱風乾燥法、冷風乾燥法であり、これらは被乾燥物の表面から蒸発により水を除去し、内部拡散により内部の水を表面に移動させて乾燥する。このため、表面蒸発および内部拡散が適当な速度で進行することが、効率の良い乾燥を行うために重要である。乾燥に好適な環境下で強く乾燥したものは、表面のみが乾燥する上乾きを起こし、内部に水が残り腐敗の原因となる。上乾きを起こしたものは、表面蒸発を抑制する環境におき、内部拡散を促進するあん蒸を行う。この他の乾燥方法としては、真空乾燥法、真空凍結乾燥法、凍乾法などがある。
 また、従来から魚介類を直接もしくはセロファンを通して乾燥した灰などと接触させることにより、脱水した乾製品が作られていたが、近年は、灰の代わりに脱水シートを用いたものも製造されている。

筆者

千葉県内水面水産研究センター 瀧口明秀