はたはたずしとは
はたはたずしは秋田県の伝統的特産品のなまなれずしである。ハタハタは秋田県では産卵のため接岸する12月上旬に多く漁獲され、特に「季節ハタハタ」と呼ばれ親しまれている。
この「季節ハタハタ」を使用して、多くの家庭で正月用のご馳走として作られていたのがはたはたずしである。家庭料理として多く作られることから、それぞれの家庭に伝わる特徴ある作り方があり、特に地域による違いが大きく、市販のはたはたずしもその地域に伝わる作り方を基本としている。
秋田県においては大きく秋田県沿岸北部、沿岸中央部、沿岸南部の3地域で類型化される。原材料の配合や製造方法が異なるが、原材料としてハタハタ、米、米麹(一部の地域では不使用)、野菜を使用するところは共通している。
はたはたずしのルーツはふなずし等のなれずしではないかと推定されるが、日本海側の北陸から北海道のなまなれずしと共通性もある。また、ハタハタの頭と内臓を除去してそのまま使用する一匹ずしとそれを 3つにスライスした切りずしの2種類がある。
主な生産地
秋田県
生産の動向・消費の動向
はたはたずしの生産量の統計値はないが、製造所個別の聞き取りによると、2000年には約1,500t以上で製造額は5億円以上と推定された。しかし近年のハタハタ漁獲量は2000年には1,500tであったが2023年には100t台まで激減している。したがって原料の減少や価格高騰のため、はたはたずし製造の中断や減産を余儀なくされる製造者もある状況となっている。製造者には水産加工業だけでなく、地域性を反映し仕出し・惣菜製造業、料亭なども含まれる。
原料選択のポイント
はたはたずしの原料になるハタハタは秋田県における漁獲量が1965年には20,000t以上あったが、徐々に減少傾向となり1983年には100t以下になった。1975年以降は秋田県外産や韓国等からの輸入ハタハタにも依存するようになった。2002年以降は秋田県産ハタハタの漁獲量も一時は3,000tを越えるようになり、秋田県産がはたはたずしの原料として復活した。しかしその後秋田県産ハタハタの漁獲量は徐々に減少し、近年は数百tレベルとなり、2023年には100t台まで激減している。
また、季節ハタハタは雄が7割以上を占め、雌の割合が少なく、雌は鮮魚として主に流通する。加工用となるのは雄であるが、秋田県産の雄ハタハタは兵庫県産などの県外産や韓国産などの輸入品と比較して脂質含量が少ない。この理由として秋田県産ハタハタは日本海北部系群に属し、産卵時に接岸するところを漁獲されるため脂質を消耗しているものと思われる。
一方、兵庫県産や韓国産のハタハタは日本海西部系群に属し、餌を多く食べている回遊時に底引きにより主に漁獲されるため脂質が多いと考えられる。はたはたずしに使用したとき両者の肉質を比較すると、秋田県産はやや硬めに、兵庫県産や緯国産は柔らかめに仕上がる傾向にある。したがって、原料の選択は製品の仕上がりを考慮して決定する必要がある。
使用する副原料
原料魚を昆布に挟み込むことで昆布の旨味を浸透させている。昆布が余分な水分を吸収することで乾燥、ドリップ流出を防止している。さらに昆布が刺身に密着し表面が露出しないため、酸化による劣化を防止している。
加工技術
ハタハタの仮酢漬工程は食酢中の酢酸により魚肉のpHを下げて身をしめることと、雑菌の抑制、特にpHを下げてボツリヌス菌の増殖を抑制するのに有効である。
また、他の副原料との混合により熟成中にハタハタ、米・米麹の成分の相互移行があり、最終的に全体の「なれ」につながっている。米・米麹を使用するはたはたずしは麹の糖化による甘みの生成および甘みのハタハタと野菜への浸透がある。
さらに秋田県沿岸中央部のはたはたずしは熟成中に乳酸菌類による乳酸発酵があり、発酵による独特の酸味と発酵臭が付与される。また、酵母も独特の香りを付与している。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 主に冷凍ハタハタで秋田県産が多く使用されるが、一部北海道産、兵庫県産、韓国産などが使用される場合もある。
- 水晒し 生のハタハタ又は流水解凍したハタハタの頭、内臓を除去し、切りずしの場合は3つにスライスした後、流水や冷却水で水晒しを行い血液や灰雑物などを除去する。この工程は製品のハタハタの色を白く保つために重要である。
- 食塩添加混合 魚肉重量に対して10%前後の食塩をふり一晩放置するである。。主な目的は血液や生臭みなどを除去することであるが、水晒しを行う場合は省略することもある。逆に塩漬のみで水晒しを行わない場合もある。
- 仮酢漬 この工程はハタハタの味についても影響を与えるが、衛生的な意味合いが大きい。ボッリヌス菌対策として初発の pHを下げて食中毒の発生を抑制することをねらっている。
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- 米飯・米麹混合 米飯はやや硬めに炊き、米飯と米麹の混合は50℃以下で行い、余熱で糖化反応を促進する。翌日まで放置する場合もある。
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- 漬込 ハタハタ、米飯・米麹、野菜を交互にきれいに並べて漬込容器に重ねて敷く積層漬けと、原材料を最初から混合して容器に漬込む混合漬けの2種類の方法がある。容器に入れた後、はたはたずしと同重量以上の重石を乗せる。
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- 発酵熟成 熟成日数は10~30日であり、地域で大きく異なる。冷蔵設備のある製造者は5℃前後でほぼ一定の日数で熟成を行うが、常温で熟成を行う場合は気温を考慮しながら熟成日数を調整する場合が多い。
- 取出し混合・包装・凍結 熟成後は漬込容器から取出し混合する。真空包装袋に充填し凍結保管後出荷する。
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加工に用いる機器
漬込容器、真空包装機
品質管理のポイント
はたはたずしの製造時期は12月から1月の寒冷期が中心となる。冷蔵設備のある製造者は通年製造販売を行っているが、はたはたずし製造工程には殺菌工程がないため衛生管理が重要である。
また、発酵熟成の終了を管理するためには発酵熟成中のpH管理も必要である。
製品の形態
200~300g詰で発泡スチロールトレーに入れラップで包装するものは主に量販店向けで、500g ~1kg詰でプラスチック容器に入れるものは主に贈答向けである。出荷時は冷凍の場合が多く、解凍して販売する場合や凍結状態で販売される場合もある。
包装および保管方法
出荷時は真空包装で冷凍の場合が多く、解凍して販売する場合や凍結状態で販売される場合もある。
調理方法および食べ方
そのまま食べるのが一般的であるが、わさび醤油で食べたり、ハタハタを焼いて食べる場合もある。また、ご飯のおかずや酒の肴どちらにもよい。
参考文献
〇塚本研一他,秋田県産ハタハタずしの化学成分と微生物相の地域特性,日本食品科学工学会誌2007;54:313-319.
〇塚本研一他,地域特産食品ハタハタの特性解明と利用加工技術開発,秋田県総合食品研究所報告2017;第19号:29-48.
(塚本技術士事務所:塚本 研一)
