目次
第14章 生食製品 第1節 製品

昆布じめ刺身

印刷

主生産地

保存方法

冷凍保存、チルド保存

備考

伝統的加工品/一般製品

昆布じめ刺身とは

 魚介類の刺身を昆布に挟み込んだもので、原料魚と昆布の旨味を味わえる富山県の郷土料理である。
(富山と昆布の関係については、本文末尾のコラムをご参照ください)

主な生産地

 富山県

生産の動向・消費の動向

 昆布じめ刺身の主たるものはカジキ類(地方名:サス)である。従来はマトウダイ、マダラ、ヒラメなど白身で淡泊な魚を昆布じめに加工する場合が多かったが、最近ではホッコクアカエビ、ホタルイカ、シラエビ(おぼろ昆布を使用)などの昆布じめ製品も製造されており、富山県では合わせて年間50 t程度が出荷されている。

原料選択のポイント

 カジキ類、シラエビ、ホッコクアカエビ(地方名アマエビ)、ヤリイカ、マダラ、トビウオ等を使用する。脂質含量が少なく、淡泊な味の魚介類を原料としている。

加工技術

 原料魚を昆布に挟み込むことで昆布の旨味を浸透させている。昆布が余分な水分を吸収することで乾燥、ドリップ流出を防止している。さらに昆布が刺身に密着し表面が露出しないため、酸化による劣化を防止している。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料魚 カジキ類の使用量が最も多く、昆布じめ刺身の60%程度を占めている。
  • 調理 カジキ類は、柵どり(写真1)後にスライスする(写真2)。その他の魚では、原料魚を三枚おろしにした後、そぎ切りして刺身状にする。
  • 昆布の前処理 食酢で昆布に付着している夾雑物を除去するとともに、昆布を柔らかくする場合もある(写真3)。使用する昆布は北海道(道南)の昆布である。
写真3 昆布の前処理 (㈱葵食品提供)
  • 挟み込み 昆布に刺身状に切り揃えた魚を挟み込む(写真4~7)
  • 重ね 軽く重石をする(写真8)。魚種により味の浸透具合が異なるので重石をしない場合もある。
写真8 重ね (㈱葵食品提供)
  • 成形 製品の大きさに裁断する(写真9)。
写真9 裁断 (㈱葵食品提供)
  • 包装 簡易包装(写真10)または、真空包装する(写真11)。

加工に用いる機器

 包丁の代わりにスライサー、裁断機を使用するメーカーもある。

品質管理のポイント

 原料の搬入から製造工程を通して低温管理(5℃以下)を行うことにより、細菌の増殖やヒスタミンの生成を防止する。

包装および保管方法

 簡易包装のものは冷蔵(0~10℃)で、真空包装のものは冷凍(-18℃)で流通し、保存期間はそれぞれ5日以内、30日以内である。

調理方法および食べ方 

 食べ方としては、昆布を外してわさび、しょうが醤油で食す。外した昆布はそのまま食べても良いが、細く刻んで酢の物や佃煮、サラダなどにも使える。(写真12~14)。

写真12 製品の食べ方 (㈱葵食品提供)

コラム

「富山と昆布の関係」
 富山県は1人当たりの昆布消費量、消費金額ともに全国トップレベルである。富山と昆布の関係は古く、南北朝時代から北海道(道南)より昆布が運ばれていたようである。その後、江戸時代になると北前船(きたまえぶね)を所有し交易業を営む有力な船問屋が台頭し、北海道との往来がより盛んになった。当時、主として米と引き替えに昆布やニシンを運んでいた。昆布じめ刺身は江戸時代に郷土料理として定着し、当初は刺身を昆布で巻いていた。昆布じめ以外にも、昆布巻きかまぼこ、昆布の佃煮、にしんの昆布巻き、とろろ昆布、おぼろ昆布など、昆布を利用した加工品が富山県で多い理由は、このような歴史的な背景があるためと考えられる。

 (富山県農林水産総合技術センター食品研究所 原田恭行 
富山県農林水産総合技術センター水産研究所 小善圭一)